用語解説
≪創造のことば≫
上古の魔法文字。天地創造に使われた言葉としるし。
この世界では言葉と文字には力があるとされる。そのため、日常生活でも使用できるように知識神エンライトがその文字や発音を崩し、乱した、「俗用言語」というものを生み出した。
≪次元神ディアリグマ≫
悪神の一柱であり、悪魔やデーモンたちが信仰する神。
デーモンは異次元の生き物のため撃破すると多くは消滅する。
≪祝禱術≫
神々が時折、これと見込んだ信徒に与える不思議な力。自らの身を介して、既にこの世界には存在しない神の力を地上に顕現させる術。
加護、奇跡、祝福などとも呼ばれる。
魔法では不可能な、傷病者を健康体にするなどの現象も起こせるため、祝禱術の使い手に対する社会的な信頼は厚い。
≪沈黙の祈り≫
地母神マーテル系の修道院で冬に行われる厳格な行事。
日の出から五日後の日暮れまで、緊急事態以外はすべての発語が禁止される。合図すら鐘や鈴で行い、最低限の睡眠など以外は祈り続ける。
≪二重魔法投射(ダブルキャスト)≫
マナを振り分けながら正確に《ことば》を同時に発声し記述する。
この世界の魔法には自爆の可能性がつきまとうが、これは特にその危険が大きく、扱いが難しい。
≪三重魔法投射(トリプルキャスト)≫
左右にそれぞれ異なる《しるし》を描き、続けざまに口で《ことば》を詠唱する。
≪木霊(エコー)≫
神話の時代にこの世界から実体を失った神々が、彼方の世界からごくごく稀に遣わす分身体。
それは彼方の世界からこの世界への、神の呼びかけの反響であると考えられ、≪木霊(エコー)≫と呼び習わされている。
その目的は様々だが、英雄を導くため、世界をその神の望む方向に動かすため、≪木霊≫は世界に響き渡る。
≪喰らい尽くすもの(オーバーイーター)≫
この剣で命ある存在を斬ると、斬った分だけ使い手の生命力が回復する、命を啜る魔剣。
難解な≪しるし≫が刻まれたそれは、魔剣の格としては最上級。
まともな武器では傷一つつかない神々の≪木霊(エコー)≫ですら、刃が届けば斬れてしまう。
≪四重魔法投射(クワドラブルキャスト)≫
口で≪ことば≫を唱える。左右の指で≪しるし≫を刻む。
更に展開された《ことば》の連なりそのものが、新たな《しるし》を空間に刻むことによって重ねて魔法を投射する。これらによって、本来では複数人での儀式が必要な≪ことば≫を単独で運用する。
≪彷徨賢者≫の秘術のうちでも、最大の絶技。
≪聖痕(スティグマ)≫
神による罰や呪い、あるいは祝福により刻まれた痕跡全般を言う。
その傷跡は刻んだ神が癒やすか、あるいはその敵対神が強引に剥がすことによってしか消すことはできない。
≪聖痕≫のおよぼす効果は刻んだ神により様々であるが、地母神マーテルの≪聖痕≫は病毒への高い耐性を与える。――子よ、健やかなれ。
≪聖なる灯の導き(ディバイントーチ)≫
灯火の女神グレイスフィールが、信徒に与える独自の祝祷の一つ。
女神の代行者として祈りを込めて動作を行うことで、迷える魂を導き浄化する。
大いなる輪廻への導き。悪しき不死者たちが天敵とする祝祷である。
≪エルフ≫
かつて始祖神が創りたもうた精霊を祖とし、水と緑を司つ奔放なる女神、レアシルウィアの眷属となった美しき長寿の種族。
多くは深い森に住まい、すぐれた魔法や妖精使いのわざを心得ている。
時には旅暮らしをしたり、人間たちの集落に混じって暮らす変わり者もいる。
≪妖精≫
自然現象に介在してその働きを助ける、精霊の下位存在、かそけきものたち。
光が光る時、そこには光の妖精の働きがあるり、木々がさわめく時、そこでは木の妖精と風の妖精が言葉を交わしているのだ。
妖精の知性や意志はぼんやりとした曖昧なものだが、「うつくしいもの」に目がないとされる。
≪妖精使役≫
妖精と語らい、彼らを使役するわざ。
魔法は論理立て、記憶し、理解することで行使される。
祝祷術は信じ、祈り、かくあれと願うことで行使される。
これに対し妖精の使役は、曖昧で気まぐれな妖精たちへの共感と受容、彼らに共鳴する感性がなければ行使しえない。
≪妖精使い≫
魔法使いや神官に比べても、妖精使いは人目を惹きやすい。
なぜなら妖精たちは「うつくしいもの」を好むため、妖精を使役する妖精使いはうつくしくある必要があるためだ。
ただし、「人間の美観」と「妖精たちの美観」は、一定の共通項を持つものの、必ずしも一致しない。
美貌の若者が妖精たちに手酷い悪戯を受けたと思えば、酷い火傷を負った老人が多くの妖精を手懐けることもある。
一定の傾向はあるが、妖精たちの感じる「美」は、人間の「美」と同じく定義不能なのだ。
≪公衆浴場(バルネア)≫
風呂ではなく、サウナと冷水プールのようなものがある。
≪清めのことば≫によって水は透き通っており、熱浴に使う膨大な燃料のかわりに≪熱のことば≫を使用している。
魔法使いたちの≪学院≫は世俗の権力と距離を保っているが、衛生、治安などに関する一部の分野については協定が結ばれている。
いかに魔法使いといえど、霞を食べては生きられない。
≪祭神看破の祈り≫
他者の信仰を見極めることができる加護のこと。いくつかの神々がこの祝祷を信徒に与えている。
善神の信徒を騙った悪なる神々の手先が、加護により人々の信望を集めた上で、悪事の扇動を始める事例もあるためだ。
ただ、この祈りが使われることは意外と少ない。
信仰者は信仰者を知っている。
よほど嘘の巧い者でもなければ、言葉を交わせば真実は自ずから明らかであるためだ。
≪目覚めたて(ノービス)≫
「祝祷に目覚めたばかりの人」のこと。文字の意味では読んだまま。
ただしワイバーンを絞め殺す英雄を、「加護を与えられて半年も経っていない」と見抜き、その通りに扱うのは容易ではない。
≪夕の祈り≫
「朝の祈り」と対を成す、神官や敬虔な信徒たちの祈りの習慣。聖務日課。
大きな神殿では、「夕の祈り」は薄闇の中に照明が灯され、厳かに執り行われる。
マリーたちの生きていた200年前は聖務日課はもう少し煩瑣だったが、大乱後に典礼改革があり見直された。
≪冒険者≫
拓かれたばかりの土地の酒場にたむろし、その腕っぷしで成り上がろうとする、野心ある者たち。
実際に200年前の未踏の遺跡を漁り、魔法の武具や金貨の入った壺などを得れば一攫千金だ。
そのため実は、意外と専業「ではない」冒険者も多くいる。
彼らは普段は季節労働者や船乗りなどの別の仕事をしつつ、美味しい話を聞きつけると、装備を担いで冒険に出かけるのだ。
≪ハッタリ屋≫
「冒険者稼業」と一口に言っても、その業態は様々だ。
彼らは人や荷物の護送や商店の用心棒など、ローリスクの仕事を好む。
そのため口が悪い同業からは「ハッタリ屋」などと呼ばれるが、注意すべきは「命をあまり賭けない」からといって「弱い」とは限らない点だ。
賭けどころを心得てるだけだよ、なぁ?
≪冒険野郎(マッドマン)≫
「冒険者稼業」と一口に言っても、その業態は様々だ。
彼らは未踏遺跡の探索や賞金首の追跡、魔物の討伐など、ハイリスクの仕事を好む。
そのため口が悪い同業からは「マッドマン」、つまりイカレ野郎と呼ばれる。死傷率が恐ろしく高いが、概して高い名声を手にするのも彼らだ。
命を賭けなきゃ、冒険の甲斐がないだろう?
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